2014年6月27日金曜日

スタッフ研修会3Days

「飛行機のチケットを取っちゃってるから、本橋さんたち、なにかやってもらえないですかねえ」
そんな出戸さんからの電話で始まった今回のスタッフ研修会の企画。
いつの間にやら僕が窓口になり、どうも僕が講師役になることになり、少々ビビりながらも準備を進めていきました。
日程は3日間です。


初日は曇天なれど風は弱く、講習をするにはちょうどいいお天気でした。
場所は小山浦、小山ハウスの目の前の海です。
メンバーは沖縄西表島のグッドアウトドアの代表・出戸さんとスタッフのマリ姉、カズハちゃん、そしてカヌースクール九州のスタッフ・エリチさん、小山ハウスの研修生?拓海くん。
講師はレインボー中谷さん、小山ハウス森田さん、そしてサニーコーストカヤックス本橋の総勢8名です。


午前中は基本的な漕ぎ方のおさらい。
僕が進行役となり講習をしていきますが、要所要所で中谷さん、森田さんからもアドバイスが入り、講習している側もなるほど、そういう指導法もあるのだなあと勉強になるシーンが数多くありました。
トレーニングストロークという、実際に海を漕ぐときには使わない(使えない?)練習のためだけの漕ぎ方などは、ステップアップの講習には非常に有効な指導法だと感じました。


午後は銚子川の河口で波乗り遊びをちょっとして、それからサイドスリップ(真横移動漕ぎ)の練習です。
もっともひっくり返りやすい練習でもあるサイドスリップ(ドローストローク、スカーリングドローストローク)ですが、みんな上手で誰も冷たい銚子川の水を飲むこともなく(残念~)それぞれに課題を残して海上での講習を終えました。

その日の講習はまだ終わりません。
今回はビデオ撮影もしたので、夜、お酒を飲みながらフィードバックを行いました。
ビデオ講習の利点は、なんといっても自分自身の漕ぎを客観的に観ることができることです。
自分がイメージしている動きと実際の動きを観ることで、課題が明確になっていきます。

ここでも教える側の学びもあり、デモンストレーションを担当した僕自身も自分の漕ぎを久しぶりにビデオで観て、恥ずかしいながらも色々と参考になりました。(けっこうちゃんと立派なデモができていたかなと自己満足~)


そして二日目。
7名様でレッスン&ツーリング ファーストステップ講習の予約があり、この講習のお手伝いをしてもらいながら安全管理や指導法、ナビゲーションなどを勉強してもらおうと考えました。

天気予報では風速10m前後の風が吹く予報でした。ただ実際の天気は回復傾向にあるようで、朝は雨も止み、風も吹いていませんでした。
グッドアウトドアのスタッフ・マリ姉とカズハちゃん、カヌースクール九州のスタッフ・エリチさん、そして僕の四人は 五ヶ所湾へと向かいました。


午前中は基本的な講習です。
雨がパラついていましたが途中からは青空も覗き、五月晴れの気持ちのいい天気になってきました。
ただ時折強く風が吹き抜けることがあり、午前中の終了間際にひっくり返ってしまった参加者もいましたが、スタッフが4名もいる万全の態勢でしたのであっという間にレスキューし、その参加者もへこたれることなく笑顔で上陸してきたので安心しました。

お昼ご飯休憩をサニーコーストカヤックスのベースでのんびりと過ごしていると、小山浦で釣りをしているはずの出戸さんから電話が入りました。
どうやら尾鷲のほうでは昼前から風が強まり、プロのガイド3人と若者1人というメンバーでも相当苦労した様子でした。
出戸さんから気を付けてくださいねという言葉を重く受け止めつつ、自身も天気の移り変わりの速さに緊張感を高めていたところだったので、午後のツーリングのコースを慎重に考えるのでした。

青空が広がった五ヶ所湾に11艇のカヤックが浮かびました。
北寄りの風が吹いてはいましたが、まだ強くはありません。僕は予定した通りに出艇場所から1kmほど南に行った狭く入り組んだ入り江へとみんなを誘導しました。
そこは奥へ入ってしまえばほぼ全方向からの風の影響を受けず、うねりも入らず、しかも上陸場所も複数あり、そこから道路を歩いて帰ることもできる入り江です。
往路は追い風となり操船に苦戦する参加者もいましたが、入り江に入ってしまうとウソのように風がなくなりまるで湖のようで、入り組んだ入り江の奥をゆっくりと丁寧に探索するのでした。

ここまで来るのに多少時間が掛かったこともあり、また、風が強く吹くことが予想できたので僕は上陸休憩をしないで元来た浜へ戻ろうと考えていました。
ところが船酔いをしてしまった参加者がいるとエリチさんから聞き、普段は上陸しない入り江の中の狭い浜に緊急上陸して全員を休ませることにしました。

一度上陸してしまうと腰が落ち着いてしまうもので、人数の多さということも手伝い30分以上もゆっくりしてしまいました。
見る間に海面を走る風が白波を蹴立てていくのが分かるようになってきました。
参加者の皆さんにある程度の状況説明をし、また、船酔いをしてしまった参加者をスタッフ2名でサポートするように指示をして再び海へ出ました。


風向きは北やや西寄り。風速は7、8m吹き続け、時折10mオーバーの強風も吹きつけてきました。
ただ帰路はほぼ風上で、カヤックの操船は考えなくてもよく、ただ前へ漕げばいいだけでした。
その距離1km弱。僕が先頭を漕ぎ、スタッフ三名は最後尾につきました。

じわじわと漕ぐだけの時間が始まりました。
岸寄りにアオサのりの養殖用杭がまだ残存していたので100mほど岸から離れて漕ぎ進みました。
不思議なもので、往路、追い風に翻弄されて遅れがちだった女性が意外としっかりとついてくるのに対して、元気だったはずの参加者が遅れだし、案の定、隊列は縦に伸び始めました。
そこまでは想定内でしたが不意に風が90度回り込み、今までほぼ正面ないし左斜め前から吹き続けていた風がいきなり右から吹きつけ、僕もパドルをギュッと握りしめて対処したのですが、後ろの方から妙な気配がしたので振り返って注視すると誰かがひっくり返っているのが見えました。
FRPの白い船底が海面に浮いているのが見え、スタッフの誰かがひっくり返ったと分かりました。

問題はその後でした。
スタッフがひっくり返って脱艇した現場に後方にいた参加者が集まり出していたのです。
この風の中で漕ぐ手を止めれば後ろに押し戻されるだけではなく、カヤックは風に対して真横に向き、さらにパドルも風にあおられやすくなりバランスを取るのが難しくなります。
僕は風の中であらん限りの大声を上げて漕げッー!と怒鳴りましたが届くはずもありません。

先頭集団を止めることもできないので僕は先頭にいた3人を浜へと誘導しながら後ろを気にしていると、スタッフの1人がレスキューに向かうのが分かり、そして間もなく後方の参加者も漕ぎ出したので一安心しました。

そうして亀のように漕ぎ進み、6人の参加者とスタッフ1名が上陸するのを見届けてから、僕は船酔いをしてしまった参加者とそのカヤックに付き添うスタッフ、それを牽引しているスタッフのもとへと漕ぎ戻り、最終的には1-1-2のフォーメーションで牽引して浜まで戻ったのでした。


上陸してまずは具合の悪くなってしまった参加者に声を掛け、その場に休ませました。
そして時計を見ると上陸休憩のあと出発してからたっぷり1時間が経っていました。
1kmを1時間。
しかし、参加者のほとんどが完漕し、スタッフも困難な状況を無事にクリアすることができ、とても充実した講習になったのでした。

この後、小山浦へと戻る車中と、戻ってからのフィードバックでの報告、反省が何よりも大事な講習、学びの場だったと感じました。
振り返ることの大切さ、そしてみんなで共有することの大事さをしみじみと思い知るのでした。


3日目。
この日はみんなで楽しく小山浦ツーリングという企画です。
パドルコーストのカヤックビルダー豊島さんも昨夜から合流し、新艇ザサツーリングで参加しました。


小山浦は出艇してすぐに洞窟があったり滝があったりします。
秘境までカヤックで10分というのがすごいです。


プロガイドだらけのこんな日に限って快晴べた凪。
洞窟にも入りたい放題、滝も浴びたい放題です。

しかもこの時、尾鷲湾に入ってきていたカマイルカの群れも見ることができました(人見知りで近づけなかったので写真はありません・・・)。



僕はというとすっかり呆けたように放心していて、尾鷲の海を身体で、心でむき出しのまま受け入れ、ゆるやかな太平洋の波のリズムと爽やかな五月の風と多くの生き物の気配に溶け込ませ、染み入り、この3日間のことをぼんやりと思い返すのでした。


こんな素晴らしいスタッフ研修会をさせていただき、本当にいい経験ができました。
出戸さん、中谷さん、森田さん、そしてマリ姉、カズハちゃん、エリチさん、拓海くん、ありがとうございました!

2014年6月7日土曜日

講師ときどき研修、のち塾生

先月中旬から海に出ること、学ぶことの多い日々を送ってきました。
そしてあらためてシーカヤックの面白さ、奥深さ、自分自身の未熟さも実感し、身に沁みる思いの連続でした。
遅くなりましたが順番に報告していきたいと思います。


5月20日から22日の3日間、沖縄県西表島からグッドアウトドア(JSCA公認スクール)の代表・出戸さんとスタッフ二名さま、そしてカヌースクール九州のスタッフ砂田さんが研修に来ました。
講師役はレインボー中谷さんと小山ハウス森田さん、そして私サニーコーストカヤックス本橋。


1日目は森田さんのベースがある小山浦でレベルアップ講習、翌2日目は五ヶ所湾で実際のレッスン&ツーリングプログラムにアシスタントとして参加して学ぶ実践編、3日目は再び小山浦に戻って日帰りツーリングをしてきました。
1日目、3日目は穏やかでしたが2日目は爆弾低気圧が接近し、普段は湖のように静かな五ヶ所湾も凶暴なまでの風が吹き荒れる時化となり、その中で確実に安全を確保しつつ勉強してもらうかをギリギリのラインで考えさせられ、判断し、そして無事に終わることができました。


翌週。5月28日、29日はJSCA(日本セーフティカヌーイング協会)ベーシックインストラクター検定会が愛知県蒲郡のレインボー中谷さんのベースで実施され、その見学に行きました。


検定は筆記と実技。
1日目は三つの講義があり、その後に筆記テストで知識の確認をします。
2日目は実技検定とSRP(セーフティ&レスキュープログラム)講習。もっとも基本的な漕ぐ技術があるかを見、そのフィードバックをして、さらに安全にツアーを運行する上で大切なレスキューの講習をしました。
3人の受験者はまさに三者三様。漕ぐ技術もカヤックの知識も経験もそれぞれです。そして検定員というのは採点をするわけで、僕はカヤックを始めて以来はじめて点数をつけるという経験をしました。
採点に関してはベテランのIT(インストラクター・トレーナー)のコア アウトフィッターズ代表山口さんとしーかやっく うみうし代表大野さんを中心に、今回初めて検定員となった中谷さんとレインボースタッフのサエミちゃんと僕が採点した点数をみんなで目合わせ(統一の目線、基準を設ける話し合い)していき、どこをどう見るかという検定員に求められる視点を勉強しました。


そして6月3日、4日、5日。昨年より開校された内田正洋さんが塾長を勤める海旅塾が和歌山県湯浅湾で実施されました。


キャンプツーリングをしながら浜辺で座学の講義を行い、シーカヤックを学ぶということに留まらず、海からの視点を養い、日本という国を見つめなおし、グローバルな意識も高め、人間育成を図る講座でした。
「スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り」というシーマンシップの基本理念は、これからの21世紀、そして22世紀へと続く人々の営みに必要不可欠だなあと感じました。
なぜなら宇宙船「地球号」の船長は僕たち一人一人なのですから。


知恵熱でもしそうなほどに充実したこの3週間。
詳細を順次アップしていこうと思います。