11月22日金曜日。
タイムオーバーが確定し苦渋の決断をくだした後、瀬戸大橋を目の前にして大型船がゆっくりと行く手を阻んだ。
それは堂々と、悠々と僕らの前を横切って行ったのだった。
瀬戸大橋を昼までに通過する。
それがこの日のリーダー、西表島まんさくツアーサービスの碇さんが立てた小豆島まで完漕するための計画だった。
昨日辿り着いた走島から、最終目的地小豆島まで約70km。
午前5時にブリーフィング。
夜明け前に出艇。
島から島へと海峡横断を繰り返し、最短コースで小豆島を目指す。
碇さんの計画は大胆かつ、緻密なタイムスケジュールで組み立てられていた。
が、それは果たせなかった。
そして昼。広島に上陸休憩した際に今回の最終着陸地点を渋川海岸としたのだった。
その後のことである。
おそらく新造船と思われる大型船が本州側からのっそりと姿を現し、その巨体が眼前を過ぎていった。
人は大きなモノを見ると感動するものだ。
生き物で言えばゾウやクジラ、建物では瀬戸大橋や超高層ビルなどを目の当たりにすると、おおぉ、と感嘆を漏らす。
この大型船は乗り物としては最大級だろう。
瀬戸大橋を背にして、遠近感が狂うサイズだ。
それがゆっくりと瀬戸大橋をぎりぎりで潜り抜け東へと去って行くのを見送りながら、僕はすっかり毒気を抜かれたようになったのだった。
ようやっと瀬戸大橋を潜る。
潮がまだ速くそれなりに緊張感のある通過だったが、僕はと言えば旅は終わったんだなあとしみじみ感じ入っていた。
こういうのを緊張の糸が切れる、油断と言うのだろう。
まるで僕の気持ちを見透かしたように数年来使い込んだカヤックフラッグが千切れて風に飛ばされていったのにすぐ気付かなかった。
後には白い棒がアンテナのように風に揺られていた。
針路を少し北寄りに取り漕ぎ進むと、遠くに渋川海岸のホテルが見えてくる。
ゴールまであと少し。
疲労感が両肩に重くのし掛かってくるのをうっちゃり、漕ぐ手に力を込める。
夕映えに瀬戸内の海が蜜柑のような橙色に染まる中、20数艇のシーカヤックが陸を目指した。
航海ログ
11月22日
05:00 ブリーフィング
06:00 大飛島南岸 通過
09:15 佐栁島南岸 到着
09:30 佐栁島南岸 上陸休憩
09:45 出発
11:00 広島南岸 通過
11:45 広島南東岸 上陸休憩
12:25 ミーティング ゴールを渋川海岸に決定
12:40 出発
13:10 本島南岸 到着
14:30 瀬戸大橋 通過
16:20 渋川海岸 到着 終了
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