2014年7月10日木曜日

シーカヤック海旅塾 湯浅湾に参加して

六月初旬、シーカヤック海旅塾に参加してきました。

昨年2013年から内田正洋さん(海洋ジャーナリスト、東京海洋大学講師)が始めた「渚の講座」海旅塾。
山口県や岡山県、そしてここ和歌山県湯浅湾でも開催し、多くの受講生を受け入れてきました。
瀬戸内カヤック横断隊でも大恩ある内田隊長あらため内田塾長の講義を拝聴しようと、紀伊半島の山道を越えて湯浅へ行ってきました。


海旅塾は講義ですが、教室で机に座って黒板に向かい先生の話を聞くわけではありません。
シーカヤックにキャンプ道具を積み込んで無人の浜へと漕ぎ出し、そこで講義は行われます。
もちろん宿泊はテント泊です。


野外での講義なので天候に左右されます。
日に焼かれ、雨に打たれることもありました。
そんな時はタープを張り、その下で講義は進められました。


講義はあらかじめ講師(海旅塾では航師と呼びます)が用意したレジメに沿って進めていきますが、海旅塾ではそれ以外の時間、例えばシーカヤックで海を漕ぐ時間はもちろん、上陸して焚火を熾すこともテントを張ることも講義に含まれます。
シーカヤックツーリング(海旅)ではそのすべてが学びの場であり、講師は内田塾長とアイランドストリーム代表の平田航師だけではなく、湯浅の海とそれを取り巻く自然そのものでした。


シーカヤックで海へ漕ぎ出すことを出艇といいますが、陸から離れて海へと漕ぎ出すのですから「離陸」ともいえます。
陸から離れること、海へ出ることは陸の上とは違う世界であり、そこでは違う視点、考え方が必要になってきます。シーカヤックをしているとこの「海からの視点」は自然と身に付いてくるものです。
そしてそれこそが海旅塾の大きな課題の一つといえるかもしれません。

海からの視点を養う。
それはグローバルな視点を培うのと同じではないでしょうか。


離陸する前には必ずブリーフィングが行われました。
海図、地図を広げて今どこにいてこれからどこへ向かおうとしているのか、今日の天気はどうか、海上交通の注意点などもみんなで共有します。
こうして意識の共有をすることも海旅ではとても大切なことです。

誰かの後ろについていけばいいや、ではシーカヤックは面白くありません。
シーカヤックに乗ったら一人一人が船長であり、機関長であり、そして気象観測員でもあります。
それぞれがシーマンシップに則って行動する、これも大きなテーマの一つだったと感じます。


湯浅湾には鷹島という無人島があり、そこには縄文時代から人が住んでいました。
そこでは鷹島式縄文土器という独特の土器が発掘され、しかも同様の土器が日本各地で発見されているとか。
湯浅湾は瀬戸内の海の玄関口にあり、古代から人々の海上交通の要所であり、また、その当時から舟での航海も含む人々の移動が盛んであった証左ではないでしょうか。

こうしたその土地その土地の歴史に触れるのも海旅の醍醐味。
今は無人の島に在りし日の名残を探して上陸し、先人たちの暮らしに思いを馳せる。
シーカヤックでの旅では時間軸がぐーっと延び、昨日とか明日とかではなく、数百年、数世紀前のことにも直結することがあり、それは逆に数百年先、数世紀先のことをも考えるきっかけにもなり得ます。


二泊三日の海旅中、天気には翻弄されました。
初日から不穏な雲行きで、風が強く吹くシーンもあり小雨もぱらつきました。
2日目は多少風は落ち着きましたが夕方からは本降りの雨となり、タープから出れない時間もありました。
最終日は晴れ間が広がりましたが午後から風が上がる雰囲気があり、午前中の講義は野営した浜から移動して行われました。

こうした判断もみんなで共有します。
そしてこの天気を含む海の状況を先読みする、予測することを「海気を読む」と表現します。
海気とは「海の気、海辺の空気」と辞書に記載のある立派な日本語です(こちらは三星堂大辞林より引用)。
海気を読むとは、海の気配、様子を伺い、観察し、多くの情報を得、そして判断することです。けっして超能力的なものではなく、シーカヤックをするうえでは必要な当たり前のことです。
ただ、そう意識してやっているかどうかは別ですね。そして海気という言葉が我が国に昔からあったという発見にも驚かされるとともに、どこかでなるほどなあと納得もしたのでした。

海旅塾ではその他にも「日本語」の発見がたくさんありました。
それは気付きの連続でした。
そんなの当たり前だよねえ、と思っていることをあらためて考えることで新しい発見があり、深く知るきっかけになるのです。


そんな3日間。本当に知恵熱でも出そうなほどにいろんな知識の洪水でした。津波のような講義でした。
今回は僕と同様プロガイドで高松のフリップサイドの植村さんも参加していました。そしてガイド志望の方が一人、あと二人はシーカヤック初心者の方でした。
こんなに参加者の経験に差があるのに、それぞれが多くのことを学ぶことができました。
経験や予備知識があってもなくても、海旅塾ではそれぞれが気付きと学びを得ることができるのだなあと思います。

最後の講義に「学びの循環」という話がありました。
そこで重要なことは学んでいく過程での’振り返ること’だと述べられていました。
振り返り(Evaluation)。
それはこのブログであり、そして提出が義務付けられているレポートもそうです。
振り返りが遅くなりましたが、こうして時間をおいたことで自然と自分の心と頭に残ったこと、身に付いたことがするすると書けたように思います。

塾長の内田さん、航師の平田さん、本当にありがとうございました!


シーカヤック海旅塾、今度は秋に開講予定です。
シーカヤック海旅塾 湯浅湾10月9日(木)~11日(土)

そして、サニーコーストカヤックスも今年度中に海旅塾開校へ向け準備を進めていきます!
詳細は後々アップしていきます。
どうぞご期待ください!

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