南西の風がやまない。
愛媛県岡村島南岸、観音崎。
早朝から数回ブリーフィングをし、リーダーを中心にどうするかをみんなで話し合う。
そして正午。
リーダーを務める沖縄のバジャウトリップ西表フィールドサービスの赤塚くんから停滞宣言が下された。
7日間で250km以上の航程を漕ぐ瀬戸内カヤック横断隊にとって、丸一日の停滞はゴールまで完漕する可能性を下げてしまう。
それが分かっているから赤塚くんのこの決断はとても重いものだったに違いない。
彼はこの日、いつも海と空を眺め、何度も堤防の先へ足を運んだ。
横断隊の目的は必ず完漕することではない。
完漕はあくまで7日間漕いだ結果としてもたらされるものであり、目的は毎日毎日考え、漕ぎ進むことだ。そう考えると完漕は手段と言えるかもしれない。
それでもこだわってしまうのが男の子というものだ。
最終的に停滞と決めるまで、朝7時のブリーフィングに始まり、9時半、そして12時と計三回全員で集まり話し合った。
朝は野営した浜の裏手にある観音崎へ登り、高台から海を観察もした。
行く手は白波が立ち、来島海峡を抜けてきた大型本船が上下するようなうねりもあった。
浜に戻ると目の前の海岸はサーフが渦巻き、飛沫が頬に当たった。
日が昇り浜にも太陽が照らすようになっても風は落ちない。
潮が満ちてきて、今や波飛沫はカヤックにも掛かりそうだ。
昼まで待機と決まり、僕はパドリングウェアを着替えた。
そして昼。もう30分くらい前からほぼ全員が焚火の前に集まり、最後の一言を待っているといった態だった。
リーダーの停滞宣言は口に出すまでもなくみんなが納得していた。
この昼までの時間のなんと濃密だったことか。
みんながそれぞれに色々なことを考えていたに違いない。
海を見る。
空を見上げる。
波を眺める。
風を感じる。
海図を開く。
スマホで天気予報をチェックし、天気図を読む。
後日、ある人からなんで朝一番に停滞判断をしなかったのか?と問われたが、なるほど、普段カヤックのガイドをしているとその日の予定は朝に決めてしまうものだが、横断隊ではこうして昼まで待機し考え悩みチャンスを待つというのが当たり前なような気がした。
待てば海路の日和あり。
この日はついにその好機は訪れなかったが、それもまた海旅である。
なんとしても事故だけは起こしてはならないという想いもある。
海に出ずとも横断隊で学ぶことは多いのである。
航海ログ
11月19日
6:00 ブリーフィングを7:00に延期すると伝達
7:00 すぐの出発を辞め、全員で観音崎の高台へスカウティング後、さらに待機と決定
9:30 再ブリーフィングで昼まで待機と決定
12:00 再々ブリーフィングで本日の停滞を決断
午後は各自、自由に過ごす。
11月19日
6:00 ブリーフィングを7:00に延期すると伝達
7:00 すぐの出発を辞め、全員で観音崎の高台へスカウティング後、さらに待機と決定
9:30 再ブリーフィングで昼まで待機と決定
12:00 再々ブリーフィングで本日の停滞を決断
午後は各自、自由に過ごす。
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